Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 12 No. 1 pp 56-65, 2022
特集2 ディサースリアの治療の重要論文を読む:EBMの時代
ディサースリアにおける声の大きさ, 発話速度,プロソディーの治療効果に関する科学的根拠:システマティックレビュー
Evidence for Effectiveness of Treatment of Loudness, Rate, or Prosody in Dysarthria:A Systematic Review
Kathryn M. Yorkston, Ph.D,
Department of Rehabilitation Medicine, University of Washington, Seattle
Mark Hakel, Ph.D,
Madonna Rehabilitation Hospital, Lincoln, Nebraska
David R. Beukelman, Ph.D,
Department of Special Education & Communication Disorders, University of Nebraska, Lincoln
University of Nebraska Medical Center, Omaha
Susan Fager, M.S.
Madonna Rehabilitation Hospital, Lincoln, Nebraska
Department of Special Education & Communication Disorders, University of Nebraska, Lincoln
(Journal of Medical Speech-Language Pathology, 15(2):xi-xxxvi, 2007)
訳:磯野千春
近畿大学病院リハビリテーション部
このシステマティックレビューでは,ディサースリアの治療介入のうち,発話全体の特徴に焦点を当てて文献調査を行った.このレビューはAcademy of Neurologic Communication Disorders and Sciences(ANCDS)の治療ガイドラインの一部である.検索は電子データベース(PsycINFO, MEDLINE, CINAHL)からと,声の大きさ,発話速度,プロソディー,全般的指導に焦点を当てた51 冊の共編書からハンドサーチで行った.これらの論文を,治療介入で得られる効果を科学的根拠の強さで評価した.論文は研究の時期に分け,治療参加者に関する記述の水準や結果の測定方法,研究統制の証拠,得られた知見の観点から評価した.治療効果について強い科学的根拠がある介入は,運動低下性ディサースリアを有するパーキンソン病の声の大きさを改善する領域であった.今後,研究の方向性として,科学的根拠の厳格さが求められ,結果の報告,治療対象の候補基準,治療介入のための運動学習原理やその有用性の記録を提供しなければいけない.