Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 4 No. 1 pp 9-11,2014

右の中脳梗塞により失調性ディサースリアを呈した一例

時田春樹1,2)  福永真哉3)

要旨:症例は60歳代,右利き,男性.2012年3月某日朝,言葉のしゃべりにくさが出現し,脳卒中の疑いで入院した.頭部MRIにて,右の中脳に脳梗塞を認めた.本例は,発話特徴として,音の歪みや発話速度の不規則性,音の引き延ばしを認め,標準ディサースリア検査では,/a/の交互反復運動の障害とプロソディーの障害が顕著であった.小脳から脳幹,視床,運動皮質に至る上小脳脚路が障害されると,小脳半球損傷と同様の発話障害を呈することが知られている.本例の発話障害は,右の中脳の腹側部から背側部にかけての脳梗塞で,上小脳脚が損傷されて失調性ディサースリアを生じたと考えられた.

キーワード:中脳,脳梗塞,交互反復運動障害,プロソディー障害,失調性ディサースリア

1)社会医療法人祥和会脳神経センター大田記念病院リハビリテーション課
2)川崎医療福祉大学大学院医療技術学研究科感覚矯正学専攻
3)川崎医療福祉大学医療技術学部感覚矯正学科言語聴覚専攻

受稿日:2014年4月5日 受理日:2014年8月20日

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