Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 12 No. 1 pp 71-83, 2022
特集2 ディサースリアの治療の重要論文を読む:EBMの時代
ディサースリアのための発話補助法:システマティックレビュー
Speech Supplementation Techniques for Dysarthria:A Systematic Review
Elizabeth K. Hanson, Ph.C.
Department of Special Education & Communication Disorders, University of Nebraska, Lincoln, Nebraska
Kathryn M. Yorkston, Ph.D.
Department of Rehabilitation Medicine, University of Washington, Seattle, Washington
David R. Beukelman, Ph.D.
University of Nebraska Medical Center, Omaha, Nebraska
(Journal of Medical Speech-Language Pathology, 12(2):ix-xxix, 2004)
訳:松原慶吾
熊本保健科学大学 保健科学部 リハビリステーション学科 言語聴覚学専攻
このシステマティックレビューは,ディサースリアのある発話者に対する発話補助法について取り上げたもので,ANCDS ( Academy of Neurologic Communication Disorders and Science)が開発した臨床ガイドラインの一部である.電子データベース(PsychINFO,MEDLINE,CINAHL)の検索と,関連する編集書籍のハンドサーチにより,発話補助法に関連する19 の論文が見つかった.発話補助法は,コミュニケーション・パートナーが不明瞭な発話を理解できるように,発話による音声信号に補助的な情報を提供するストラテジーの一群である.このストラテジーには,①単語の最初の文字を指差しながら話す「ポインティング・スピーチ (alphabet supplement)」,②発話内容の話題を示してから話す「トピック補助法」,③発話による説明に伴う「ジェスチャー補助法」がある.これらの文献によると,医学的診断やディサースリアのタイプに関係なく,重度または高度のディサースリアのある発話者には,発話補助法のストラテジーが有効であることが示唆されている.それぞれのストラテジーには独自の利点と欠点があるため,さまざまなストラテジーの中から個別に選択する必要がある.特に,発話速度を低下させることが適切な介入対象の場合,いくつかのストラテジーは発話を改善できる利点がある.また,ストラテジーの使用を成功させるためには,聴取者が重要な役割を担っている.これらを踏まえて,今後の研究の方向性を示した.