Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 14 No. 1 pp 24-30, 2024
特集1
言語聴覚士のための臨床栄養
総説
口腔機能管理と栄養
金久弥生
明海大学 保健医療学部 口腔保健学科
要旨 「言語聴覚士のための臨床栄養」をテーマとする本特集に際し、口腔機能管理およびオーラルフレイル,口腔機能低下症の理解は欠かせない.栄養=食事摂取であり,人々の安心安全な食事摂取には,摂食→咀嚼による食塊形成→舌による送り込み→嚥下反射といった,一連の摂食嚥下機能に関係する健常な口腔機能が必要である.口腔機能が健常に発揮できるよう,我々歯科医療職は口腔の衛生管理や歯科治療による咀嚼機能の回復,摂食嚥下機能の維持向上を図ることにより,口腔機能を総合的に護り・修復してきた.その内容と栄養との関連について言語聴覚士の方々にも知っていただきたい.加えて,オーラルフレイルや口腔機能低下症は全身のフレイルやサルコペニア,低栄養のリスクであり,予防・改善が我が国の重要な課題である.そのため,オーラルフレイルと口腔機能低下症およびその評価方法について理解していただく必要があると考えている.口腔領域や食事摂取に関する領域を専門とする歯科医療職と言語聴覚士は,オーラルフレイルや口腔機能低下症についての共通理解に加え,リハビリテーション・栄養および口腔管理の三位一体の取り組みといった国の政策にもとづき,今後さらなる連携を図ることにより,国民のおいしく楽しい・安心安全な食事を護り,ひいては健康長寿の延伸の一助になる重要な役割を担える職種であると考える.
キーワード 口腔機能管理,栄養,咀嚼機能の回復,オーラルフレイル