Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol.6 No.1 pp22-27,2016


─総 説─

ディサースリアの呼吸と発声の評価と介入 ─脳卒中回復期を中心に─

椎名英貴

要旨: 脳卒中後のディサースリアにおいて声の問題は発話の明瞭度,自然度への影響も大きく,改善に向けて積極的に取り組むべき課題である.ディサースリアの声の問題の原因は呼気の産生,喉頭での音声変換,もしくはその両者に帰せられる.呼気産生能力低下に対しては評価に基づき,最適姿勢の設定と徒手的な呼気誘導を行う.喉頭の音声変換の問題は,過緊張を伴う過内転パターンと緊張低下による声門閉鎖不全に大別できる.過内転パターンの喉頭に対しては声帯の内転方向の圧が弱まるように,声門閉鎖が不十分な喉頭に対しては声帯の内転を促通するように働きかける.方法としては目指す方向に合致した姿勢設定,発声方法の誘導,語音の選択などを組み合わせる.母音発声から段階的に文章に拡張し会話レベルで望ましい声帯振動が得られることを目指す.

キーワード:ディサースリア,音声障害,声帯の過内転,声門閉鎖不全,評価,治療的介入

社会医療法人大道会森之宮病院リハビリテーション部