Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 3 No. 1 pp 21-25,2013
─症例報告─
鼻咽腔閉鎖感覚の運動訓練を中心としたアプローチで
鼻咽腔閉鎖不全が改善した痙性ディサースリアの1例
福永真哉1,2,4) 森 希望2) 仲野里香3) 平田幸一4)
要旨:脳血管障害による重度の鼻咽腔閉鎖不全がある痙性ディサースリア1例を経験した.本症例は初回評価にて鼻漏出が顕著で,発話特徴として,開鼻声,粗ぞう性嗄声,声量の低下,構音の歪みを認め,発話明瞭度は2.5/5,発話自然度は3/5と低下していた.本症例に対し,/a:/の持続発声時に他動的に軟口蓋を挙上させる鼻咽腔閉鎖感覚の運動訓練,自動的な軟口蓋挙上運動訓練,対照的生成ドリルを用いた構音訓練からなるアプローチを実施したところ鼻漏出が軽減し,開鼻声,発話明瞭度,発話自然度の改善が得られた.上記の結果から,鼻咽腔閉鎖不全例に対する発声時の他動的な鼻咽腔閉鎖感覚の運動訓練を中心としたアプローチの有効性が示された.
キーワード:鼻咽腔閉鎖不全,痙性ディサースリア,開鼻声,鼻咽腔閉鎖感覚の運動訓練,対照的生成ドリル
1)姫路獨協大学医療保健学部言語聴覚療法学科(〒670-8524 兵庫県姫路市上大野7-2-1)
2)酒井病院リハビリテーション部(〒671-2216 兵庫県姫路市飾西412-1)
3)恵光会原病院言語療法科(〒815-0042 福岡県福岡市南区若久2-6-1)
4)獨協医科大学神経内科(〒321-0293 栃木県下都賀郡壬生町北小林880番地)
受稿日:2013年6月6日 受理日:2013年6月24日