Japan Journal of Clinical Research in Dysarthria Vol. 3 No. 1 pp 16-20,2013
─原 著─
標準ディサースリア検査からみた多発性硬化症の特徴
堀田弘伸 柴田香理
要旨:多発性硬化症(multiple sclerosis;MS)患者49名に標準ディサースリア検査を実施し,以下の特徴を認めた.1)発話明瞭度から重症度を判定すると軽度の症例が多かった,2)発話明瞭度と自然度がともに「1」の症例でも舌の突出─後退,左右移動交互反復運動の速度低下が高頻度にみられた,3)比較的若年に発症するため呼吸・発声機能は年齢群別の基準値で評価しないと機能低下を見逃す可能性がある,4)発話特徴として「構音の歪み」「声量の低下」「開鼻声」「声の大きさの単調性」を認めた.さらにMSに伴うディサースリアのタイプは失調性と痙性の両要素を併せもつが,これに一側性上位運動ニューロン性タイプの要素も含まれる混合性ディサースリアと考えられる.
キーワード:多発性硬化症,ディサースリア,標準ディサースリア検査
医療法人セレスさっぽろ神経内科クリニックリハビリテーション課
受稿日:2013年7月19日 受理日:2013年9月9日